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ベイルート

※はじめに。
ベイルートというと、イスラエルによるレバノン侵攻を思い起こして心配する人がいるかもしれないけど(特にお母さん!)、現地で安全を確認した上で訪れています。自分の目で見たものをちゃんと知ってもらいたいので事実をありのまま書きますが、イラクとは違います。どうかあんまり心配しないでください。


レバノンの首都、ベイルートに着いた。街全体が洗練されていて、旧宗主国フランスの面影があちこちに残っている。アラビア語とフランス語の2ヶ国語を話す人も多い。

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ベイルートに着いた日、ホテルで会った韓国人の男の子にレバノンの情報をたくさんもらった。彼はレバノンにもう20日も滞在している。バールベック、レバノン杉など、世界遺産もいくつかあるが、レバノンは岐阜県ほどの大きさしかない、地中海に面した小さな国だ。
「20日も何していたの?」と聞くと、「あちこち観光したよ。あとは、ジャーナリストと話したり、いろいろ考えたり・・・」と言う。そう、ここは色々考えてしまう国なのだ。

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レバノンはイスラエルと対立している。でもわたしが知っていたのはその事実だけで、なぜそんなことになったか、わたしの知識はあまりに貧弱だった。韓国人の彼はわたしの知識の薄さを馬鹿にすることもなく、この国の問題を丁寧に説明してくれた。

その問題を、ここに要約して書くのは難しい。ただひとついえるのは、この国の抱える問題は、ただ単にレバノンVSイスラエルという戦いだけではないということ。宗教と民族が絡み合った複雑な内部問題も同時に存在している。

レバノンには30%のクリスチャンと、70%のムスリムが住む。クリスチャンは3つの主要宗派に、ムスリムも3つの主要宗派に分けられ、それぞれの宗派が複雑に関係しあって摩擦を引き起こしており、問題はクリスチャンVSムスリムという単純な構図でもない。

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ベールートの街は、真っ青な地中海を囲むようにしてある。まずはホテルのあるダウンタウンからグランドモスクへ向かう。
1ブロックごとにATMがあり、アルマーニがありフェラガモがありマックスマーラがあり、そういう、東京で言えば青山みたいな通りに、戦車と、ライフルを持った軍人がいる。

それはとても奇妙な光景だ。一見するところ、町並みはヨーロッパのどこかの首都のよう。それも、高級店ばかりが軒を連ねる表通りだ。ホームレスみたいな格好の(周囲の人と比較するとそうとしか感じられない)わたしが、入るのを躊躇ってしまうほどおしゃれなレストランがあり、ムスリムの多い国とは思えないほどのビールやワインを取り揃えた店がある。

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そこに・・・なぜ軍人が?戦車まで?答えは、グランドモスクの裏通りの広場へ行って分かった。そこにはたくさんのテントが建ち、中で生活している人たちがいた。あちこちにレバノン国旗が掲げられている。聞けば、首相に対するデモンストレーションらしい。

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バリケードの向こうのものものしい軍人をよそに、テント村の雰囲気はとてもリラックスしている。おしゃれな若い子達が、グループデートでもしているみたいな雰囲気で、シーシャ(水タバコ)をふかしながら楽しそうに喋っている。ベビーカーを押した家族がいて、犬の散歩をする人がいる。

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けれど、ここが青山と違うのは、彼らのうちの多くが、レバノン国旗をスカーフのように体に巻きつけていたり、小さな国旗を手に持って歩いていることだ。

テント村を抜けて西へ進むと、道中バリケードによって封鎖された通りがたくさんあった。ごみひとつない、とても美しい通りなのに、店の大半がシャッターを下ろしている。ホテルの人に聞いたが、今月1日のデモ開始から、ずっとこの状態なんだという。

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そこからハムラ地区へ向かう。
街の目抜き通りであるハムラ通りには、スターバックスやかわいい服を売る店が並ぶ。東京となんら変わりない町並みなのだけれど、新しく建てられた建物の裏に隠れるように、古い建物が残っていて、それらの建物のほとんどすべてに弾痕が残っていた。
中でも、インターコンチネンタルホテル・フェニキアの横に建つビルのそれはひどい。廃墟となった建物のひとつを、壊れた窓の外から覗いてみると、中には木っ端微塵になった洗面所のシンクらしきものが残されていた。

壊されても、壊されても、立ち直り続ける意思を示すかのように、街のあちこちで、巨大なビルが建設されていた。建設現場の外には、ドゥバイを思い出すような完成予想図が描かれている。

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民族の対立、宗教の対立。日本に住んでいたらぴんとこなかったこれらの問題に、ベイルートで少し触れることができた。日本でも時折ニュースで目にすることがあるだろうレバノンの抱える問題。それは決して昔の話ではなく、遠い国の出来事でもない。


※下の写真は、生中継で演説するイスラム教シーア派組織ヒズボラの指導者ナスララ氏(TV内)と、その様子を広場に設置された大スクリーンで見ている数千人のデモ市民。親シリア派である彼らヒズボラは、スンニ派で反シリア派の現首相スオニラ氏の打倒を目指し、各地でデモを行っている。
海外のメディアの多くが、ヒズボラをテロリストの一派であるかのように報道しているが、それは現レバノン首相がアメリカと親密な関係であるためだと、現地で会ったアメリカ人ジャーナリストは言っていた。彼はヒズボラの本拠地も訪れ、「ヒズボラはレバノンの自立と平和を願っていると感じた」と話している。
 
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by tomokoy77 | 2006-12-07 02:26 | Lebanon  

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