彼女のインド

e0040591_20592868.jpgコルカタの常宿パラゴンで、インドに来るのは初めてという28歳の日本人女性に出会った。
3週間の予定という彼女は、緊張と興奮がないまぜの、でも不思議と輝く表情で、初インドの印象を語ってくれた。
「毛穴がきゅっとする」と言う。外に出ると、インドの空気と人に圧倒されて、全身の毛穴がきゅっと締まる感じがすると言うのだ。

ああ、その感覚。わたしも初めてインドに来たとき感じたなあと思った。安宿から一歩外へ出ると、大通りにもかかわらず牛がいて、路上で眠る人がいて、あちこちから怪しげな人が声をかけてきて、期待と不安が押し合いへしあいしながら、びくびく、わくわく歩いたものだった。

今は違う。すっかり、こちらの世界に慣れてしまった。ボラれないコツも知っているし、怪しい人には近付かない。言葉が通じない国へ行っても、ガイドブックがなくても、どうにかやっていける。道路の上に何が落ちていようが誰が寝ていようが、出された食事に食べ物じゃないものがわんさか入っていようが、さして驚かない。たまに驚くような事態に遭遇しても、その驚きはいつまでも続かず、さーっと波が引くように去ってしまう。

旅ばかり3年もやってきたのだから当たり前だけれど、彼女のきらきらした顔を見て、何もかもが驚きと興奮の連続という様子を見て、懐かしく、少し羨ましかった。彼女の目に映るインドと、わたしの目に映るインドは、たぶん随分違う。
旅も潮時かな、と思った。驚いたり興奮することばかりが旅の目的じゃないけれど、この旅は、もうこれで一度切り上げたほうがいいかもしれない。得るものもなく、考えることもなく、ただ刹那的な楽しみを積み重ねるだけの旅なら。

そう思った途端、まわりの景色が再び鮮やかな色を帯びた。もう2度と過ごすことができないかも知れない時間だと、しみじみ思えたからだろう。旅も残りわずか。旅の始まりのころのこの感覚を思い出させてくれた彼女に感謝。
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by tomokoy77 | 2007-01-28 20:58 | India  

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