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牛と猿と果物店主

牛と猿と果物店主_e0040591_16583639.jpg「南インドでどこが良かった?」と聞くと、「ハンピ」と答える旅行者に、これまでたくさん会った。中には「この世の風景じゃないみたい」と言う人までいて、期待が大きすぎたのかもしれないが、2日間の遺跡めぐりを終えての感想といえば、村の周囲に打ち捨てられたように残る建造物は、盛者必衰的な趣があって、なるほど遺跡好きにはたまらない場所かもしれないが、そうじゃない人にとってみれば、目立って面白いものがある場所ではない。

田舎の風情といくらかの自然が残っているとはいえ、村はもう十分に観光開発されており、長逗留しようとも思わない。巨石の転がる風景は確かに不思議だが、この世のものではないと思うほどでもない。


牛と猿と果物店主_e0040591_16584669.jpg石窟だの巨大寺院だの緻密なレリーフだのといったものよりも、わたしはそこに住む生き物を見ているほうがずっと面白い。例えそれが見慣れた動物であっても。

この村には牛と猿が多い。どちらもヒンドゥーの世界では神様だが、路上の果物売りにとってはどちらもやっかいな存在のようだ。
店主は長い棒を手に、地上から突進してくる牛と、屋根づたいに飛んでくる猿とを常に警戒し、どちらがやってきても容赦なく棒で追い払う。
牛はその巨体を生かし、猿は知恵を生かして攻撃に出る。店主たちには悪いが、その攻防戦は遺跡見学よりずっと興味深く、見飽きることが無かった。

# by tomokoy77 | 2007-01-11 16:58 | India  

ハンピ

ハンピ_e0040591_16573226.jpgその昔、14世紀から16世紀にかけて南インド全域を支配していたヴィジャヤナガル王国の都、ハンピに来た。

現在は椰子とバナナの林の間に巨石がごろごろ転がる不思議な風景の小さな村だが、村の周囲26k㎡には王国時代の遺跡が40以上残されている。

観光の拠点となるハンピ村には、商店やレストランの並ぶ500mほどの目抜き通りと、高さ50mの白い塔門を持つヴィルパークシャ寺院以外に目立ったものはない。


ハンピ_e0040591_16574547.jpg2日かけて遺跡めぐりをした。村の裏手にあるマタンガ山から眺めた、川と岩山と景色はきれいだったが、例によって遺跡には興味が無い。中でもここは、巨大・立体・石造と、私の苦手な遺跡の条件が3つとも揃っている。

遺跡めぐりはつまらなかったが、椰子とバナナの木に囲まれた散歩道はいいものだ。その町の名所に興味が持て無くったって、大丈夫、楽しみ方はいくらでもあるもの。

# by tomokoy77 | 2007-01-10 16:51 | India  

右手のにおい

右手のにおい_e0040591_16465497.jpg南インドへ来て以来、毎日一食か二食ずつ食べ続けているミールス(カレー定食)。外国人だからとスプーンを出してくれる店もあるが、ほとんどの場合右手で食べてきた。
と、最近自分の右手と左手のにおいが違うことに気づいた。食後、石鹸で手を洗っているにも関わらず、どうも右手がカレー臭い。
わずか20日間でこれだから、何十年とこうしてカレーを食べ続けてきたインド人の右手は、どんなにおいがするものか。

# by tomokoy77 | 2007-01-08 16:46 | India  

ダンスフェスティバル

ダンスフェスティバル_e0040591_16273178.jpg毎年年末から1月末にかけてマハーバリプラムで催されるダンスフェスティバルを見に行った。

午後6時、アルジュナの苦行と呼ばれるレリーフの前に設けられた会場へ向かう。本日踊られるのは、4000年の歴史を持つインド4大古典舞踏の中でも最古の歴史を誇るバラタナーティヤムという踊り。ここタミルナードゥ州を発祥地とし、太鼓・笛・バイオリン・ベルによる音楽と歌に合わせ、主に一人の女性によって踊られる。

両足首にたくさんの鈴をつけた踊り子は、まず舞台端に置かれた踊るシヴァ像に祈りをささげ、それからゆっくりと踊り始めた。


ダンスフェスティバル_e0040591_16274311.jpgひざを曲げ、腰を落とし、両足で床を踏み鳴らすようにしてリズムを取り、舞台上をダイナミックに飛び回ったかと思えば、手話で何かを語りかけるようになめらかに踊る。
”ムードラ”と呼ばれるこの手指の動きが、この舞踏においてとても重要なものらしい。また、身体の動きに合わせて、表情も逐一変化する。目をぎょろっと見開き、喜怒哀楽を表情で表現する。同じヒンドゥー文化を持つインドネシアのバリ島で見たレゴンダンスと、目の使い方がよく似ている。

今は廃止されたカースト制度において、踊り子は祭祀を司る最高位のバラモンに属していたそうだ。というのも、インドにおいて舞踏は楽しみにためではなく、神との交流の手段のひとつであったためらしい。

# by tomokoy77 | 2007-01-07 16:26 | India  

マハーバリプラム

マハーバリプラム_e0040591_1642977.jpg インド4大都市のひとつチェンナイから、南へ海沿いに60km下ったところにあるマハーバリプラムに来た。ベンガル湾に面したリゾート地である一方、世界遺産に登録された数々の遺跡を有する小さな町だ。

海沿いには、7世紀後半に建てられた海岸寺院がある。以前は同じような寺院が7つもあったそうだが、1400年以上も風邪と波にさらされ、いまや残っているのはこの寺だけになってしまった。ふたつ並んだ小さな寺には、各々シヴァ神とヴィシュヌ神が祀られている。


マハーバリプラム_e0040591_1644381.jpgインド人観光客も多く、海岸寺院脇の砂浜には輪投げ屋や射的屋が出ており、そこから町へむかう参道には、貝で作った土産物を売る店や、マサラをまぶした魚を揚げて食べさせる店が軒を連ねている。
そのうちのひとつ、アジやイワシにまじって、太刀魚の揚げ物を売る店があった。身がふっくらしていて、揚げたてはとても美味しい。


マハーバリプラム_e0040591_1645690.jpg海岸から500mほど町へ戻ると、南北1kmにわたる大きな岩山がある。この山のあちこちに古い彫刻や石窟が残っていて、こちらは海から離れているため保存状態もよく美しい。
中でもアルジュナの苦行と呼ばれる、幅29m高さ13mの岩壁に彫られた彫刻はマハーバーラタを題材にした巨大なもの。この象の大きさは実物大というから、この彫刻がどれほど大きなものか分かる。


マハーバリプラム_e0040591_1651062.jpg岩山の周りは芝で囲まれ、公園のようになっており、インド人家族が集っている。その一角にクリシュナのバターボールと呼ばれる巨石がある。下り坂の途中で止まってしまったような不思議な岩だ。その昔象で動かしてみようと試みた人がいたそうだが、押しても引いてもびくともしなかったという。

岩山の小高いところに上ると、マハーバリプラムの町や、遠くの川、辺りを埋め尽くす椰子の木畑が見渡せ、沈む夕日がとても美しかった。

# by tomokoy77 | 2007-01-06 16:02 | India